Category: blog - 2011.03.28

smartgeometry.org

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2011年3月28日からコペンハーゲンで開催されたSmartGeometryに参加してきた。 以前も紹介したように、SGは年々ネットワークを拡大しながら大学をベースにしたワークショップとアカデミックなカンファレンスを行うデジタルアーキテクチャーのイベントで、今年はコペンハーゲンのデンマーク王立芸術学院の協力を得て開催された。

ディレクターのShaneBurger (Grimshaw NY)曰く、「はじめて十分な広さの場所、充実した工房、そして施設内のフルWifiアクセスの3つがそろったワークショップになった」との事で、満を持しての開催に嬉しさがこみ上げている様子だった。

今年のテーマとなった’Building the invisible’はまさに現代社会にあふれる”見えない情報”の中での建築像そしてそれを担う建築家の役割が問われているものだといえる。毎年選ばれ る10組の講師陣のテーマはそれぞれがメインテーマを解釈し直したものとなっていて、特に目立ったものはセンサーやUDPを使って人間のアクティビティー や都市空間に流れる情報をリアルタイムでインプットしていく手法を建築に応用したものだった。

たとえば、触覚センサーを生地に埋め込みながら繊維を縫い込む手法を試したクラスターPerforming Skinでは,縫い上げたものが人間の肌と同様に圧力や温度に反応し、それが建築を皮膚のように覆うというイメージを実際の作品に仕上げている。また、 Reflected Environmentというクラスターでは実際のワークショップが行われている部屋の人の密度や移動、温度や電力消費量を観測し、それをモーターで浮き 沈みするクラゲのようなオブジェクトを通じて環境を可視化させる試みをしていた。

さらに、ユーザーインターフェースとAR(Augmented Reality)を活用したInteracting with the cityクラスターではユーザーが実際に都市の情報に触れ、体感するという一種の疑似空間をテーマにしたもの。ヴァーチャルなものとアクチュアルなものの 混在を日常として受け入れている現代の我々の生活をさらに加速させる装置として、実験的なインターフェースのあり方を試みている。

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より複雑化した社会の中で、現代の建築家は今までに無く多くの情報を扱い、判断する事を期待されている。
目に見えない情報も含め、一つ一つを可視化していき、ユーザーがアクセスしやすいインターフェースやプラットフォームを作るという事は最重要課題の一つだ ろう。そしてそれぞれの情報を的確に判断するために、デザインはデザイナーの独断で決められていくものから、知のネットワーク利用した専門家のチームが連 携を組むものへの移行がますます進むだろうと感じられた。同時に情報自体の信頼性や、デザインへの正当性を精査する注意深さも今後ますます必要になってく るのではないだろうか。

それとは別に、発足11年目を迎えるSmartGeometryのコミュニティーとしての成長も目を見張るものがあった。もの作りの発想、環境を支えるの はそこに集う人だという事を再認識させられる。Shaneが会の締めくくりに繰り返し述べた「このコミュニティーは信頼関係によって成り立っている」とい う言葉はそれを印象付けるものだった。

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SGは今年の9月にはカナダのモントリオール、来年の3月にはNYで開催される事もすでに発表されているので、今後の展開を今から楽しみにしている。

http://smartgeometry.org