Category: blog - 2013.09.09

New Chapter

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約半年間の日本滞在を終え、ロンドンで再び活動を始めた。
ザハ・ハディドという建築家のもとで日本のプロジェクトに関わるためだ。

久しぶりのロンドンは冷たい空気が肌に伝わってきて心地が良い。ヨーロッパの中では大都市にもかかわらず、この街は自転車で移動できる大きさを保っていて、人はどこか素朴な優しさがある。20世紀の金融工学やコンピューターサイエンスを先駆け、物事のシステムを作るのがとても上手な国民のはずなのに、人と人のつながりはとてもアナログで不器用。イギリス人はそんな憎めない国民性を持っている。また、ロンドンは半数近い40%の住民が移民であるイギリスの中でも特別な街。バスや地下鉄に乗るといろんな国の訛りを持った英語が聞こえてくる。顔を上げてみると目の前に白人が一人も座っていないということは、この街では珍しいことではない。そんな雑多で、彩りの豊かな人々が持ち寄る文化がロンドンを作り上げて来たのだ。しかし、他民族が共に暮らすという事はそれほど簡単な事ではない。葛藤や軋轢、不安や苛立ち、そして反抗と闘争。そこで生まれるほとんどのものは、お世辞にも美しい姿をしていない。でも、そんな人間のどうしようもない部分を包み込んで、それでも生きていく力を与えてくれるこの街の強さに自分は魅力を感じ続けているんだと思う。

ザハ・ハディドも同様にイラクからイギリスに移り住んできた移民である。そして事務所で働く所員の多くも、イギリス国外から集まっている。事務所はまさにロンドンの縮図のような場所であって、また自分がこの街に返ってきたことを日々実感している。その雰囲気は時にロンドンの空気のように張り詰めて冷たく、同時に逞しさと優しさにあふれている。僕のからだも半年間止まっていた時計の歯車がゆっくりと回り始めるように、ロンドンの空気を吸ってまたイキイキと活動を始めている。