Category: blog - 2011.08.21

Ethnic Minority

ロンドンから英国各地へ広がった先日の暴動は、沈静化まで1週間を要した。略奪による死者は5名、逮捕者は二千数百名に上るこの事件は、オリンピックを翌年にひかえるこの国に大きな不安と衝撃を残している。イギリスにおけるデモや暴動の歴史は長く、昨年も大学の学費高騰に端を発する学生デモが暴徒を生み、保守党の建物を破壊し、不法占拠を行った。

所得層に関わらず、若年世代全般の社会への不安が明らかになった昨今の事件に政府は有効な対策をとる事が出来ていない。またソーシャルネットワークを利用 した同時多発的な暴動の広がりにも対応は遅れを取るばかりだった。その反面、地域コミュニティーは敏感にその危機感を感じ取っている。

ロンドンの南部、低 所得者が集まる地域といわれ今回の暴動の標的となったブリクストン、クラッパムの両エリアでは、事件直後から破壊された町並みを立て直すため、自発的な集 会、清掃、呼びかけが行われ始めた。また、未だにバリケードを張ったままの小売店の壁には地域住民からメッセージが残されている。

ロンドンにおけるEthnic Minorityの割合は30%を占め、他民族が集まって暮らし、所得格差も大きいこの街では争いの数も少なくはない。ただ、それを救うためにハリウッド 映画のようなヒーローは現れない。社会的な混乱に対して一人一人が危機感を持ち、自発的に行動する。

ネットワークを利用してクリティカルマスを形成する。そう して生まれるコミュニティーの治癒力はこの街の本当の強さ、そしてイギリスという成熟した民主主義国家の祖型を現しているように感じた。

8月9日にリアルタイムでアップデートされたGoogle暴動マップ。
これによって帰宅を早めたり、帰路を変更したりする人も多かった。

©PA通信