Category: blog - 2013.08.02

Inside SmartGeometry (AD)

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過去12年間のSmartgeometryの活動をまとめた特集がイギリスのADマガジンから出版された。僕自身の活動も紙面で一部取り上げていただいているのだけど、本当に多岐にわたったデジタルデザインの試みがまとめられていて、とても充実した内容になっている。

Smartgeometryはコンピュータ技術を活用して建築デザインの更なる可能性を追求しようと2001年に発足した。以来、建築事務所のスタッフ、プログラミングの研究者、大学が一体となり毎年ワークショップと会議を重ねるスタイルを貫いている。活動の特徴の一つは、毎年世界中の異なる都市で開催されるというものだ。持ち込む機材や環境は同じでも、その場所の文化的 な背景や、もの作りの考え方から毎年新しいディスカッションが生まれるというところが継続した面白さにつながっているのだろう。つながりはヨーロッパやアメリカに広がり、参加者同士の情報交換やスキルの向上に貢献している。
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デジタル技術やファブリケーション機材は今や世界中の主要都市ではどこでも、比較的安価に手に入れる事が出来るようになった。日本でも始まったFablabを通じた活 動を見ても分かるように、デジタルデザインはもはや大学や研究機関に限られた活動ではなくなっている。そうした中でこれからはより場所性や地域性を反映した活動 が盛んになってくるのだろう。

例えば、同じデジタル技術でも、アメリカの場合、昆虫に電極を挿してリモコンで操るとか、パンの切れ端や落ちている空き缶をパソコンのキーボードに代用す るなどと言ったブラックジョークとも取れるような研究も含めて幅広く行われている印象がある。彼らのベンチャー精神はいつも勇気づけられるほどで、 100個の研究の中で1つ面白いものがあれば儲けモノといった感覚で実験的な研究を盛んに行っている。

一方、ヨーロッパでは、研究の方向性や可能性を吟味した上でやや慎重に研究を進めている印象がある。初期のRepRapプロジェクトPatubeな ど研究の成果にある普遍性を求めたり、広く社会に貢献するようなものに価値を見いだす傾向が見られる。また、歴史的な都市のコンテクストに最新の技術を スーパーインポーズすると言ったアプローチも盛んで、AR(拡張現実)のプロジェクトなどはヨーロッパではとても面白い可能性を持っているように感じる。

日本で見たOmote 3D Shashin Kanなどは、いい意味ですごく日本的な3Dプリントの活用法だと思う。モノ作りの技術が既にかなり高い国なので、既存産業との共同研究などで、応用の自由度もこれから加速度的に広がっていくのではないだろうか。

手仕事とコンピューターの技術両方を備えている国はなかなか無い。(スイスなどは良い例である)新しい技術の導入と伝統的な手法の融合といった課題は今後ますます注目を浴びていくのだろう。